第4課
4つの格
Die vier Fälle
日本語の「が・の・に・を」の役目を、ドイツ語では冠詞の形の変化が担います。冠詞を見れば、語順がどうであっても誰が何をしたのかがわかります。
この課で読めるようになるもの
eines Morgens · zu einem ungeheueren Ungeziefer
冠詞が助詞の代わりをする
日本語では「門番が男を見る」と「男を門番が見る」は同じ意味です。助詞が役割を示すので、語順を入れ替えられます。
ドイツ語もこれと似ています。ただし助詞の代わりに、冠詞の形が役割を示します。この形の違いを格と呼び、4つあります。
| 格 | おおよその役割 | 日本語 |
|---|---|---|
| 1格(主格) | 主語 | 〜が・〜は |
| 2格(属格) | 持ち主 | 〜の |
| 3格(与格) | 間接目的語 | 〜に |
| 4格(対格) | 直接目的語 | 〜を |
定冠詞 der の変化
前の課で覚えた der / die / das は、実は1格の形です。格によって次のように変わります。
| 男性 | 女性 | 中性 | 複数 | |
|---|---|---|---|---|
| 1格 が | der | die | das | die |
| 2格 の | des | der | des | der |
| 3格 に | dem | der | dem | den |
| 4格 を | den | die | das | die |
表を丸暗記する前に、よく出る目印を覚えてください。
- den を見たら、男性の4格(を)か、複数の3格(に)
- dem を見たら、男性か中性の3格(に)
- des を見たら、男性か中性の2格(の)。名詞のほうにも -s / -es がつきます(des Vaters 父の)
不定冠詞 ein の変化
ein も同じように変化します。語尾の部分が der の語尾とよく似ていることに注目してください。
| 男性 | 女性 | 中性 | |
|---|---|---|---|
| 1格 が | ein | eine | ein |
| 2格 の | eines | einer | eines |
| 3格 に | einem | einer | einem |
| 4格 を | einen | eine | ein |
kein(ひとつも〜ない)や、次の課で学ぶ mein(私の)・sein(彼の)も、まったく同じ語尾をとります。
語順を入れ替えても意味は同じ
Der Türhüter sieht den Mann.
門番が男を見る。
Den Mann sieht der Türhüter.
男を、門番が見る。(意味は同じ。「男を」が強調される)
der は1格、den は4格なので、どちらの順番でも「門番が男を」です。英語のように「最初に来た名詞が主語」と読むと、二つめの文を誤解してしまいます。
3格:「〜に」
Der Mann gibt dem Türhüter alles.
男は門番にすべてを与える。(dem = 男性3格)
3格は「〜に」のほかに、多くの前置詞の後ろでも使われます。これは第6課で詳しく見ます。
2格:「〜の」と「ある〜に」
2格は名詞の後ろから「〜の」を表します。
das Zimmer des Vaters
父の部屋
そしてもう一つ、カフカを読むうえで大事な使い方があります。2格だけで、前置詞なしに 「いつ」を表す ことがあるのです。
eines Tages(ある日)、eines Abends(ある晩)も同じ形です。物語の書き出しによく使われます。
冒頭文の格を見る
『変身』の冒頭文の後半を、格に注目して読んでみましょう。
zu einem の einem は中性3格です。前置詞 zu がいつも3格を求めるので、こうなっています。形を見るだけで「何かに」の意味だと見当がつくわけです。
確かめる
Den Mann sieht der Türhüter. で、見ているのは誰?
der Türhüter が1格(主語)、den Mann が4格(目的語)です。先頭にあるかどうかは関係ありません。
eines Morgens の意味は?
2格だけで「いつ」を表す使い方です。物語の書き出しの決まり文句です。
dem になるのはどれ?
dem は男性と中性の3格です。女性3格は der、複数3格は den。