Deutsch für Kafka カフカを読むためのドイツ語
コースの道のり

読解1

Gibs auf!

あきらめな!

朝の町で道に迷った「私」と、巡査の短いやりとり。全文わずか10行ほどの、カフカの完結した作品をまるごと読みます。

作品について

1922年の終わりごろ、カフカがノートに書きつけた小品です。カフカ自身は「ひとつの注釈」(Ein Kommentar)という題をつけていました。死後に友人マックス・ブロートが遺稿を出版したとき、いまの題「Gibs auf!」(あきらめな!)がつけられました。

ほぼすべてが過去形で、文はコンマで次々につながっていきます。第7課までの知識で骨組みは読めます。まだ習っていない形には、そのつど説明をつけました。

原文

まず全体を眺めて、読み上げを聞いてみてください。わからなくてかまいません。

Es war sehr früh am Morgen, die Straßen rein und leer, ich ging zum Bahnhof. Als ich eine Turmuhr mit meiner Uhr verglich, sah ich, daß es schon viel später war, als ich geglaubt hatte, ich mußte mich sehr beeilen, der Schrecken über diese Entdeckung ließ mich im Weg unsicher werden, ich kannte mich in dieser Stadt noch nicht sehr gut aus, glücklicherweise war ein Schutzmann in der Nähe, ich lief zu ihm hin und fragte ihn atemlos nach dem Weg. Er lächelte und sagte: »Von mir willst du den Weg erfahren?« »Ja«, sagte ich, »da ich ihn selbst nicht finden kann.« »Gibs auf, gibs auf«, sagte er und wandte sich mit einem großen Schwunge ab, so wie Leute, die mit ihrem Lachen allein sein wollen.
Franz Kafka, Gibs auf!(1922年執筆)

一文ずつ読む

1. 駅へ

Es それは war 〜だったsein sehr früh とても早く am Morgen, 朝のam = an dem die Straßen 通りは rein und leer, 清らかで空っぽwaren が省略 ich 私は ging 行ったgehen zum Bahnhof. 駅へzu dem
朝とても早い時間で、通りは清らかでがらんとしていた。私は駅へ向かっていた。

2. 時計を見比べる

ここは少し長い文です。als が2回出てきて、意味が違うことに注意してください。

Als 〜したとき従属接続詞:動詞を文末へ ich 私が eine Turmuhr 塔の時計を4格 mit meiner Uhr 私の時計とmit + 3格 verglich, 比べたvergleichen:副文なので文末 sah 見た・わかったsehen:主文の動詞 ich, 私は daß 〜ということを従属接続詞 es (時刻が) schon もう viel später ずっと遅くspät の比較級 war, 〜だった副文なので文末 als 〜よりも比較の als ich 私が geglaubt hatte, 思っていた過去完了(第8課)
塔の時計を自分の時計と見比べたとき、思っていたよりもずっと遅い時刻になっていることがわかった。
  • 最初の Als は「〜したとき」。過去の一回の出来事を表します。
  • 最後の als は、später(より遅い)と組んで「〜よりも」を表します。英語の than です。
  • Als … verglich, daß … war の部分では、動詞が文の最後に来ています。こうした文(副文)の仕組みは第9課で詳しく学びます。

3. 急がなければ

ich 私は mußte 〜しなければならなかったmüssen の過去形 mich 自分を再帰代名詞 sehr とても beeilen, 急ぐsich beeilen:不定詞は文末
ひどく急がなければならなかった。

müssen(〜しなければならない)のような助動詞を使うと、本来の動詞は不定詞のまま文の最後に置かれます。mußte が2番目、beeilen が最後。この「枠」の形も第9課で扱います。

4. 道がわからなくなる

der Schrecken 驚きが主語 über diese Entdeckung この発見についてのüber + 4格 ließ 〜させたlassen mich 私を im Weg 道においてin dem unsicher 不確かな werden, 〜になるlassen と組む不定詞
この発見に驚いて、私は道に自信がなくなった。

lassen は「〜に…させる」。直訳すると「この発見についての驚きが、私を道において不確かにならせた」です。

5. 不慣れな町

ich 私は kannte 〜を知っていたkennen mich 自分を in dieser Stadt この町で3格 noch nicht まだ〜ない sehr gut とてもよく aus, sich auskennen の aus
この町にはまだあまりくわしくなかった。

文末にぽつんと残った aus に注目してください。sich auskennen(〜にくわしい)という動詞の一部が、文の最後に切り離されています。これを分離動詞といいます(第9課)。kannte … aus をひとまとまりで読むのがこつです。

6. 巡査がいた

glücklicherweise さいわい war いたsein ein Schutzmann 一人の巡査が主語 in der Nähe, 近くに3格
さいわい、近くに巡査がいた。

7. 道を尋ねる

ich 私は lief 走ったlaufen zu ihm hin 彼のほうへhin は「向こうへ」 und そして fragte 尋ねたfragen ihn 彼に4格 atemlos 息を切らして nach dem Weg. 道をfragen nach 〜
私は彼のところへ駆け寄り、息を切らして道を尋ねた。

8. 巡査の問い

Er lächelte 彼はほほえんだ und sagte: そして言った »Von mir 私からvon + 3格 willst 〜したいのかwollen du 君は den Weg 道を4格 erfahren?« 知る・聞き出す不定詞は文末
彼はほほえんで言った。「私から道を聞き出したいのかね?」

巡査は私を du(君)と呼んでいます。見知らぬ大人どうしなら Sie(あなた)を使うのがふつうなので、ここには相手を目下に見るような響きがあります。

9. 私の答え

»Ja«, はい sagte ich, と私は言った »da 〜なので従属接続詞 ich 私が ihn それを= den Weg selbst 自分で nicht 〜ない finden kann.« 見つけられる副文なので kann が文末
「はい」と私は言った。「自分では見つけられないので」

ihn(彼を)は、ここでは人ではなく der Weg(道) を指しています。第5課で見たとおり、男性名詞は物でも er / ihn で受けます。

10. あきらめな

»Gibs auf, あきらめろgib + es + auf gibs auf«, あきらめろ sagte er と彼は言った und wandte sich そして身を向けたwenden mit einem großen 大きな〜で3格 Schwunge 勢いder Schwung の古い3格 ab, 離れてsich abwenden:背を向ける so wie Leute, 〜な人々のように die (その人々は)関係代名詞 mit ihrem Lachen 自分たちの笑いと allein 二人きりで・ひとりで sein wollen. ありたい副文なので wollen が文末
「あきらめな、あきらめな」と彼は言い、大きく身をひるがえして背を向けた。自分の笑いとふたりきりになりたい人たちがよくするように。
  • Gibs auf は gib es auf を縮めた形です。aufgeben(あきらめる)の命令形 gib … auf に、es(それを)がはさまっています。
  • wandte sich … ab も分離動詞です。sich abwenden(背を向ける)。
  • die … wollen は「〜する人々」と前の Leute を説明する関係文です(第9課)。

全文訳

考えてみる

道を尋ねるのは日常のありふれた行為です。巡査はそれに答える役目の人のはずです。けれども返ってくるのは道ではなく「あきらめな」という一言でした。

カフカ自身がつけた題は「ひとつの注釈」です。何についての注釈なのかは書かれていません。この「書かれていない」ことが、カフカを読むときにくり返し出会う感覚です。

確かめる

viel später …, als ich geglaubt hatte の als の意味は?

da ich ihn selbst nicht finden kann の ihn が指すのは?

Gibs auf の元の動詞は?