読解3
Vor dem Gesetz
掟の門前
門の前に立つ門番と、中に入りたい田舎の男。カフカの作品のなかでもっともよく知られた寓話の書き出しを、これまでの課の総まとめとして読みます。
作品について
1915年に雑誌に発表され、のちに短編集『田舎医者』に収められた短い寓話です。長編『訴訟』(『審判』とも訳されます)の終わり近くでも、聖堂で僧が主人公に語って聞かせる話として登場します。
『変身』と違って、この話は現在形で語られます。いつの、どこの話なのかがわからない、昔話や法律の条文のような時間の感覚が生まれています。
原文(書き出し)
Vor dem Gesetz steht ein Türhüter. Zu diesem Türhüter kommt ein Mann vom Lande und bittet um Eintritt in das Gesetz. Aber der Türhüter sagt, daß er ihm jetzt den Eintritt nicht gewähren könne. Der Mann überlegt und fragt dann, ob er also später werde eintreten dürfen. »Es ist möglich«, sagt der Türhüter, »jetzt aber nicht.«
一文ずつ読む
1. 門番
2. 田舎から来た男
vor dem Gesetz(3格:掟の前で)と in das Gesetz(4格:掟の中へ)。同じ das Gesetz が、男がいる場所と行きたい方向とで、冠詞の形を変えています。この話のすべてが、この二つの格の間で起こります。
3. 門番の答え
4. 男の問い
- ob は「〜かどうか」。尋ねた内容を表す副文を作ります。
- werde … eintreten dürfen は「入ってよいことになるだろう」。werde は未来を表す werden の接続法 I です。
- 副文なので本来は動詞が最後ですが、eintreten dürfen のように不定詞が二つ並ぶときは、例外的に werde がその前に出ます。読むときは「werde + 不定詞二つ」をひとまとまりとして見てください。
5. ありうることだ
ここで初めて、門番の言葉が直接の引用(»…«)で出てきます。それまでの接続法 I による間接的な報告から、急に門番の声が聞こえてくるように変わります。
全文訳(書き出し)
この先を読む
話はこのあと、開いたままの門を男がのぞきこむところへ続きます。門番は笑って、自分の後ろにはさらに強い門番たちが控えていると告げます。男は門の脇に座って待ち、何日も、何年も……。
ここまでの11課で、この先を読むのに必要な文法はひととおりそろっています。全文は2ページほどです。辞書と変化表を手もとに置いて、続きをぜひ自分で読んでみてください。どこで原文を読めるかは「次に読むもの」にまとめてあります。
確かめる
daß er ihm jetzt den Eintritt nicht gewähren könne で、ihm は誰?
er(1格)が門番、ihm(3格:〜に)が男です。門番が男に入ることを許さない、という関係です。
この話が『変身』と違う時制で語られていることの効果として、ふさわしいのは?
現在形で語ることで、特定の過去の出来事ではなく、いつでもどこでも起こりうる寓話のような時間が生まれています。