第9課
副文と枠構造
Nebensatz und Satzklammer
ドイツ語の文は、動詞が文頭近くと文末に分かれて、その間に言葉をはさむ「枠」の形をしています。この形がわかると、カフカの長い文が急に読みやすくなります。
この課で読めるようになるもの
Als Gregor Samsa … erwachte, fand er sich …
枠:動詞が二つに分かれる
第3課で「動詞は2番目」と学びました。実は、動詞にあたる部分が二つあるとき、一つ目が2番目に、もう一つは文の最後に置かれます。その間にほかの語句がすべてはさまります。これを枠構造と呼びます。
これまでにもう何度か出会っています。
| 枠の左側(2番目) | 間 | 枠の右側(文末) | 種類 |
|---|---|---|---|
| ist | mit mir | geschehen | 完了形 |
| mußte | mich sehr | beeilen | 話法の助動詞 |
| kannte | mich in dieser Stadt noch nicht sehr gut | aus | 分離動詞 |
| wandte | sich mit einem großen Schwunge | ab | 分離動詞 |
読むときは、2番目の動詞を見たら、文末に何が残っているかを先に確かめる。これがドイツ語を読むときのいちばん実用的なこつです。
話法の助動詞
「〜できる」「〜しなければならない」などを表す助動詞です。本来の動詞は不定詞のまま文末に置かれます。
| 不定詞 | 意味 | er の現在形 | 過去形 |
|---|---|---|---|
| können | 〜できる | kann | konnte |
| müssen | 〜しなければならない | muß(muss) | mußte(musste) |
| wollen | 〜したい | will | wollte |
| dürfen | 〜してよい | darf | durfte |
| sollen | 〜すべきだ | soll | sollte |
| mögen | 〜を好む、〜かもしれない | mag | mochte |
Von mir willst du den Weg erfahren?
私から道を聞き出したいのかね?(willst … erfahren が枠)
Gibs auf!
分離動詞
auf-, ab-, an-, aus-, ein-, mit-, zu- などの前つづりがついた動詞は、文の中で前つづりが切り離されて文末に行きます。
| 不定詞 | 意味 | 文の中では |
|---|---|---|
| aufgeben | あきらめる | Gib es auf! |
| sich auskennen | 〜にくわしい | ich kannte mich … aus |
| sich abwenden | 背を向ける | er wandte sich … ab |
| aufstehen | 起き上がる | er stand … auf |
| eintreten | 入る | er tritt … ein |
辞書を引くときは、文末の前つづりと2番目の動詞を合わせた形で探します。kannte … aus なら auskennen です。文末の小さな語を見落とすと、意味がまったく変わってしまうので注意しましょう。
副文:動詞が文の最後へ
dass(〜ということ)、als(〜したとき)、wenn(〜するとき、もし〜なら)、weil(〜なので)などの従属接続詞で始まる文(副文)では、主語に合わせて形を変えた動詞が、副文の最後に置かれます。
| 接続詞 | 意味 |
|---|---|
| daß(dass) | 〜ということ |
| ob | 〜かどうか |
| als | (過去に一度)〜したとき |
| wenn | 〜するときはいつも、もし〜なら |
| weil / da | 〜なので |
| obwohl | 〜にもかかわらず |
| bis | 〜するまで |
…, sah ich, daß es schon viel später war, …
もうずっと遅い時刻だということがわかった(war が副文の最後)
Gibs auf!
冒頭文の骨組みがわかる
いよいよ『変身』の冒頭文の形が説明できます。
Als から erwachte までの副文全体が、主文の「1番目の位置」を占めています。 だから主文の動詞 fand は、コンマのすぐ後ろ(2番目)に来て、主語 er はその後ろに回ります。
[Als Gregor Samsa … erwachte,] fand er sich … verwandelt.
───────── 1番目 ───────── 2番目 文末
主文のほうも、fand(2番目)と verwandelt(文末)で枠になっています。ドイツ語の文は、枠の中に枠が入る入れ子の構造なのです。
als と wenn
どちらも「〜するとき」ですが、使い分けがあります。
- als:過去に一度だけ起きたこと。Als Gregor … erwachte(ある朝目覚めたとき)
- wenn:くり返し起きること、現在・未来のこと、条件
Er lag auf seinem panzerartig harten Rücken und sah, wenn er den Kopf ein wenig hob, seinen gewölbten, braunen … Bauch.
彼は甲羅のように硬い背中を下にして横たわり、頭を少し持ち上げると(そのたびに)、丸く盛り上がった茶色の腹が見えた。
Die Verwandlung
頭を上げるたびに見える、なので wenn です。
関係文
前の名詞を説明する「〜する(ところの)」は、関係代名詞 der / die / das で始まる副文で表します。これも動詞は最後です。関係代名詞の形は、ほとんど定冠詞と同じです。
… so wie Leute, die mit ihrem Lachen allein sein wollen.
自分の笑いとふたりきりになりたい人たちのように(die = Leute を受ける関係代名詞、wollen が最後)
Gibs auf!
コンマの後に der / die / das が来て、副文の最後に動詞があれば、関係文の可能性が高いと考えてください。
確かめる
ich kannte mich in dieser Stadt noch nicht sehr gut aus を辞書で引くには?
文末の aus と kannte(kennen の過去形)を合わせて、sich auskennen(〜にくわしい)を引きます。
Als Gregor Samsa … erwachte, fand er sich … で、fand の後ろに主語 er が来る理由は?
Als … erwachte の副文全体が1番目の位置を占めるので、主文の動詞 fand が2番目、主語 er はその後ろになります。
毎朝くり返し起きることを「〜するとき」と言うなら?
くり返しの出来事には wenn を使います。als は過去の一回の出来事です。