第11課
接続法:間接話法と「〜かのように」
Konjunktiv I und II
「〜だと彼は言う」「もし〜なら」「まるで〜かのように」。現実とは少し距離のある言い方を、ドイツ語では動詞の特別な形で表します。カフカの文に欠かせない形です。
この課で読めるようになるもの
…, daß er ihm jetzt den Eintritt nicht gewähren könne.
動詞の「もう一つの顔」
これまで見てきた動詞の形は、事実をそのまま述べる形でした(直説法)。ドイツ語にはもう一つ、接続法という形があります。事実ではなく、人が言ったこと・想像したこと・ありえないことを表すための形です。
接続法には二種類あります。
| 種類 | 主な使い方 | 見分け方 |
|---|---|---|
| 接続法 I | 間接話法:「〜だと(誰かが)言う」 | er/sie/es の形が -e で終わる(-t がない) |
| 接続法 II | 非現実:「もし〜なら」「〜なのだが」 | 過去形にウムラウトや -e がついた形 |
ここでも目標は形を作ることではなく、見て気づくことです。
接続法 II:もし〜なら
接続法 II は、だいたい過去形をもとに作られます。強変化動詞では、母音がウムラウトして -e がつきます。
| 不定詞 | 過去形 | 接続法 II |
|---|---|---|
| sein | war | wäre |
| haben | hatte | hätte |
| werden | wurde | würde |
| können | konnte | könnte |
| müssen | mußte | müßte |
| kommen | kam | käme |
| schlafen | schlief | schliefe |
| vergessen | vergaß | vergäße |
過去形と形が似ていますが、意味は過去ではありません。「(実際はそうではないが)もし〜なら」という現在の仮定です。
『変身』で、虫になったグレゴールが最初に考えることのひとつがこれです。
実際には眠り続けることも忘れることもできない。その非現実の願いが、wäre・weiterschliefe・vergäße の形に表れています。
ふだんの会話では、多くの動詞の接続法 II を würde + 不定詞 で言い換えます。Ich würde gern schlafen.(眠りたいのだけれど。)
「まるで〜かのように」
カフカの文にとてもよく出てくるのが、als ob(まるで〜かのように)です。後ろには接続法が来ます。
Er sah aus, als ob er krank wäre.
彼はまるで病気であるかのように見えた。
ob を省いて、als のすぐ後ろに動詞を置くこともできます。この形を知らないと、als を「〜したとき」や「〜よりも」と読み違えてしまいます。
グレゴールの会社から様子を見にきた支配人が、虫になった彼を見て、ドアから少しずつ後ずさりしていく場面です。
接続法 I:間接話法
人の言ったことを「〜だと言う」と間接的に伝えるとき、書き言葉では接続法 I を使います。不定詞の語幹に -e をつけた形で、er/sie/es のとき -t がつかないのが目印です。
| 不定詞 | 直説法(er) | 接続法 I(er) |
|---|---|---|
| sein | ist | sei |
| haben | hat | habe |
| können | kann | könne |
| werden | wird | werde |
| kommen | kommt | komme |
er komme を見たら、文法の間違いではなく、「(彼は)来る、と(誰かが)言っている」という接続法 I です。語り手は、その内容が本当かどうかについて責任を持たずに、ただ伝えています。
『掟の門前』の門番と男のやりとりは、この接続法 I で語られます。
er と ihm は別の人です。er は門番、ihm は田舎から来た男。カフカは名前を使わないので、代名詞の格を手がかりに、誰が誰に何をするのかを追いかける必要があります。
確かめる
wäre は何の形?
sein の接続法 II。過去形 war にウムラウトと -e がついた形で、「(もし)〜であるなら」という非現実を表します。
er sagt, daß er komme の komme の意味合いは?
er/sie/es なのに -t がない形は接続法 I。間接話法で「来る、と彼は言う」です。
als vertreibe ihn eine unsichtbare Kraft の als の意味は?
als のすぐ後ろに動詞(接続法)が来ているので、als ob と同じ「まるで〜かのように」です。